人類は、疫病や災害などどうしようもない災難に出会うたび、不思議な生き物や人智を超えた存在に願いを託してきました。
コロナウイルスが世界中に広まりつつある今、日本では「アマビエ」という妖怪が話題になっています。
コロナウィルスの流行とアマビエ
『アマビエ(アマビヱ)の図』(京都大学附属図書館所蔵) [see page for license]
元の絵がユーモラスなタッチということもあり、恐ろしい印象は受けません。
江戸時代の瓦版に描かれた妖怪ですが、コロナの関係で人気になり。現代のSNS上でも多くの人が描いているようです。
「尼彦」「天彦」も仲間と考えられており、マスコット的な愛らしい容姿が現代人の心もとらえているようですね。
アマビエは予言をする妖怪ですが、災いを伝える件(くだん)とはやや異なります。
水木しげる先生による『ゲゲゲの鬼太郎』にもアマビエは登場し、
ピンクの髪と大きな瞳が印象的な姿で描かれています。
ほんとだ❣️
大事にしてる鬼太郎切手シートに、アマビエちゃんがいる〜✨✨
なんかうれしい☺️💖 pic.twitter.com/OSNsXjJRHu— yayasuke (@aiai12310) April 25, 2020
「アマビエ」です。水木しげるの原画を撮影しました。
江戸時代、熊本の海に現れ「疫病が流行ったら私の写し絵を早々に人々に見せよ」と言って海中に姿を消した妖怪、というより神に近い…もの。
現代の疫病が消えますように。 pic.twitter.com/0P7HfyRe8h— 水木プロダクション (@mizukipro) March 17, 2020
アニメ版では可憐な姿で親しまれ、このたびのコロナの関係で再び注目されることとなりました。
新型コロナ騒動で、時をこえて多くの人に描かれることになったアマビエですが、いったいどういう妖怪なのでしょうか。
アマビエとは?
アマビエが初めて登場したのは江戸時代の終わり頃です。
場所は現代でいうと熊本県です。1846年(弘化3年)、半魚人とでも表現されるような、不思議な姿の妖怪が人間の前に姿を現しました。
長い髪を持ち、身体からは光を放っていて、夜の海から現れたそうです。
アマビエは、こんなことを言いました。
「これから6年ほどは、豊作が続くが疫病も流行る。私の姿を描いて、皆に見せよ」
そして描かれたのが、現在も伝わっている、嘴のある人魚のような姿のアマビエです。
アマビコは「私の姿を見た者は無病長寿」とご利益も伝えていることから、
現代の疫病ともいえるコロナウィルスへの対抗手段として、SNS上などで盛んにその姿が描かれ、広められることとなりました。
久しぶりにアマビエ様描いた。疫病退散を祈る。 pic.twitter.com/JNJCU2XGcC
— めいやん( ・ε・) (@mayan_someya) April 25, 2020
アマビエさん描いた〜
もしよかったら退屈しのぎにぬりえしてあげてください☺️
1日も早くみんなに会える日が、舞台芸術が楽しめる日が戻りますように…#アマビエチャレンジ pic.twitter.com/wAYaNz2b69— モモトモヨ (@momoto_mo) April 24, 2020
アマビエと人魚
アマビエは海から現れ、人間と魚の特徴を持っている生き物のようですが、人魚とは異なるようです。
史料によればアマビエの足に当たる部分は三本に分かれているのだとか。
出典:https://jp.quora.com/疫病の流行で現れる妖怪アマビエとは何ですか?
アマビエはアマビコの間違いという説もありますが、アマビコも含めると7件から9件の目撃史料があるそうです。
また、「アマビコ」は猿に似ているとする説もあり、猿のような声だとも書かれています。
一方、人魚も日本各地で目撃談を残しており、魚と猿を足したような姿とする説もあります。
人魚の伝説をもとに、グロテスクな見た目の標本が作られたこともありました。
日本の精巧な職人技術で作られた人魚の標本は、まるで本物のようだったそうです。
海外では美しい女性の「マーメイド」が有名ですが、日本の人魚は恐ろしい見た目であることが多く、実在するものとして漁師たちに恐れられていました。
聖徳太子も人魚に遭遇したことがあるそうで、殺生を戒めるために自分の姿を伝えてほしいと人魚に請われ、観音正寺を建立したそうです。
アマビエ以外の予言をする人魚
海からやってくる不思議な生き物が予言をしたという伝説は各地に残っています。
アマビエと同じく、災厄を伝えたのが「ザン」です。
Katsushika Hokusai / Public domain
ザンは沖縄県で親しまれており、人魚のような姿であり、1771年(明和8年)の八重山地震津波を予言したそうです。
人の言葉を話すとされます。
また、アマビエとよく似た言葉を残した「神社姫」も、人魚のような姿をしていたそうです。
神社姫は江戸時代に人々の前に現れて、当時の人々を恐怖に陥れたコレラを予言し、自分の姿を絵に描いて広めるよう言ったそうです。
類似の伝承は各地にあり、人魚による予言と救済策は後世まで語り継がれることとなりました。
日本の人魚伝説
人魚に関する言い伝えや記録は、日本においてもかなり昔から存在します。
日本書紀にも記録されており、滋賀県には蒲生川で捕獲されたとする人魚の墓も存在しています。
肉を食べると不老不死になるという伝説もあり、実際に人魚の肉を食べたとされる八百比丘尼の話なども伝わっています。
人魚のミイラも祀られており、もしかしたら人魚は実在したのではないかと言われています。
一説ではリュウグウノツカイが人魚のモデルともされており、リュウグウノツカイが地震に関係があるとする説が「人魚の予言」につながっているのかもしれません。
龍宮寺の人魚
福岡県の龍宮寺には今も、人魚の骨が存在しているそうです。
1222年(慶応元年)に捕獲されたという人魚は、なんと140メートル以上ある巨体で、お寺に伝わる掛け軸にも描かれているのだそうです。
人魚塚に埋葬されたとのことです。事前に確認すれば骨を見せてもらうこともできるそうなので、人魚の存在を自分の目で見たい人はぜひ訪れてみましょう。
まとめ
コロナウィルスの流行は、文明と科学の進んだ現代社会にも大きな影響を与え、かつての日本人が信じていたアマビエの存在を思い起こさせることとなりました。
人魚に似た不思議な姿には、疫病を退散させる力があるのかもしれません。