私たちが住むこの大宇宙には、まだまだ数多くの謎や不思議は存在しています。
天文学や物理学の進歩で、宇宙に秘められた数々の謎が解明されてきました。
現代では観測によってその存在が立証されているブラックホールも、かつては理論上の仮想の存在に過ぎませんでした。
しかし、人類はまだ、この宇宙の根本的な多くの謎を解明してはいません。
宇宙はどうやって誕生したのか?
地球に生命が存在するのはなぜか?
そして、宇宙はいつ終焉を迎えるのか?
ここではいまだ解明されない「不思議な宇宙の謎9つの説」についてご紹介しましょう。
1.宇宙の始まりに関する3つの説
近代に至るまで、この宇宙の存在は「永遠不変」のものであると信じられていました。
始まりもなく終わりもなく、変化することもなく永遠に存在し続けるのが宇宙であり、その「始まり」や「終わり」を想像することはナンセンスとされる愚問でした。
しかし、天文観測の知識や技術が発達することで、次第に「宇宙の始まり」は存在したのではないか、という仮説が立てられるようになります。
この仮説こそが「ビッグバン理論」です。
①宇宙は「大爆発」から始まった
宇宙の始まりの瞬間、超高温超高圧の塊が爆発的事象を起こし、急激に膨張拡大するという現象が起こりました。
この現象を「ビッグバン(Big Bang)」と呼び、ビッグバンによって宇宙が誕生し構成されたとする理論のことを「ビッグバン理論」といいます。
1929年、アメリカの天文学者エドウィン・ハッブルは天文観測によって、地球が属している銀河系(天の川銀河)の外にも別の銀河系が存在していることを発見します。
この時ハッブルは、それらの銀河系が地球に対して等しく「赤方偏移」していることも発見しました。
赤方偏移とは、物体が遠ざかるときに、それが発する光の波長が遠ざかっていく距離と速度に応じて長い波長に伸びることで「赤」く見える現象を意味します。
日常的に体験できる現象としては、遠ざかっていく救急車のサイレンの音が低くなる「ドップラー効果」と原理的には同じと言えます。
ハッブルはこの観測結果から、宇宙が一定速度で膨張し続けていることを発見、これが後の「ビッグバン理論」(当初は仮説)の元となっていきます。
②宇宙誕生以前に存在した「無」は「無」ではなかった
爆発的事象によって宇宙が誕生したとする「ビッグバン理論」ですが、ではこの宇宙が誕生する以前、そこには何があったのでしょうか?
これには「なにもない」=「無が存在した」としか、表現のしようがありません。
もし、ビッグバン以前に何かが「あれば」、ビッグバン以前に宇宙が存在したことになり、ビッグバンを宇宙の始まりとすることは不適切になるからです。
故に、ビッグバン以前には「無」があった、とした表現のしようがないわけです。
しかし、この「無」とはただ「なにもない」状態を意味するものではありません。
実はビッグバン以前には素粒子が存在していたと考えられています。
この素粒子にはプラスとマイナスの状態のものがあり、それが相殺しあうことで、結果的には「無」という状態があったのです。
そのプラスとマイナスの均衡が僅かに崩れ、プラスの状態が急激に膨張を引き起こします。
この膨張が重力と熱エネルギーを生み出すことで、現在の宇宙が形作らえれていったと考えられています。
③宇宙は「ブラックホール」の中に存在する
宇宙の発生以前、そこには極限の密度まで圧縮されたエネルギーが存在していたわけです。
これと同様の現象を天文学的に観測することが可能です。
それが、恒星の末路として誕生すると言われる超高重力・高密度の天体、ブラックホールです。
言い換えれば、この宇宙とはブラックホールの中に生じた、と考えることも可能になるのです。
私達が天文学的に観測できる、実在するブラックホールの中にも、宇宙は存在しているのかもしません。
2.地球の生命に関する3つの説
地球に生命が誕生したのは、太陽から生命誕生な適正なエネルギーを受け取れる一定の距離の領域(ハビタブルゾーン)に、適度の質量を持つ惑星=地球が存在したという偶然によるものだと考えられています。
しかし、実際に生命がどのような過程で地球上に誕生したかについては、いまだ幾つもの仮説が存在し、結論付けられてはいません。
果たして、我々人類の祖先はどうやってこの地球上に発生したのでしょうか?
①現在最も有力視される「ワールドRNA仮説」
地球上に生命が発生するには、その前提条件として絶対に必要なものが存在します。
それが「有機物」です。
地球上の物質は大別して「有機物」と「無機物」に分けることが可能です。
「有機物」は炭素が原子を結合する中心となる物質を指し、それ以外の物質は「無機物」です。
地球上の生物はこの「有機物」によって構成されていることから、「炭素生物」とも呼ばれます。
地球が誕生した当初、この地球上には無機物の物質しか存在しませんでした。
そのため、地球上に生物が発生するためには、いかにして生物を構成する有機物が地球上に誕生したのか、その謎を解き明かすことが必要でした。
1953年、当時シカゴ大学の学生であったスタンレー・ミラーは、この謎を解明すべく、ある実験を行いました。
その実験とは、メタンやアンモニアといった、原初の地球の大気に近いと考えられるガスを容器に封入し、そこにその時代の地球で頻繁に起こってたとされる雷に見立てた放電を繰り返すというものでした。
その結果、スタンレーは容器の中でアミノ酸を始め糖・塩基・リンといった有機物が生成されたことを確認したのです。
これらの物質はすべて、炭素生物を構成するのに必須の有機物でした。
こうして、地球上に生物を構成する物質が揃うことで、38億年前に最初の単細胞生物が誕生したと考えられているのです。
この仮説を「ワールドRNA仮説」と呼び、現在地球上の生物の発生を説明する、最も有力な仮説と考えられています。
②生命の起源は宇宙にあるとする「パンスペルミア説」
現在地球上に存在する生物の起源は、宇宙にあるとする説も存在します。
この説の根底には、生物が地球上独自に存在するものではなく宇宙全体に遍在しているという思想があり。その生命の種子となるものを「パンスペルミア」、そこから地球上の生物が発生したとする説を「パンスペルミア説」といいます。
パンスペルミア説は大きくわけて、パンスペルキア自体が恒星の発する光の圧力を受けて宇宙空間を漂い地球に到達したとする「光パンスペルミア説」と、隕石などに付着して地球上に落下したとする「弾丸パンスペルミア説」、あるいは「岩石スパンペルミア」説の2つがあります。
また、1981年にはイギリスの科学者であり、DNAの二重螺旋構造を発見した功績で知られるフランシス・クリックが、高度に進化した知的生命体が地球に意図的にパンスペルミアを”種まき”したとする「意図的パンスペルミア説」を提唱しています。
ワールドRNA仮説が最有力視される現代において、パンスペルミア説は異端扱いされていますが、1984年に南極大陸で発見された「アランヒルズ84001」という火星由来とされる隕石から、微生物の痕跡が発見されていることから、」「パンスペルミア説」がまったく荒唐無稽と言い切ってしまうことはできないでしょう。
③根強く支持される「神による創造説」
古来、宗教的には地球上のあまねく全ての生物は神によって創造されたと考えられていましたが、科学の発展により、上記のような「ワールドRNA仮説」や「パンスペルミア説」が台頭する現代では、もはや時代遅れの感が拭えません。
しかし、生物を神の創造物であると考える人は現代でも相当数おり、生物の「神による創造説」もまた、姿を変えて根強く生き残っているのも事実です。
その、ひとつの例と言えるのが「インテリジェント・デザイン(Intelligent Design)」論、通称ID論です。
ID論とは、生物のみならずおよそ自然界のあらゆる事象が、無駄がなく完全に調和したものになっていることを捉え、それは進化論のような偶然によってではなく、何か高度に知性(Intelligence)を持った存在が意図的にデザインしているとする考え方です。
ID論はアメリカから発祥した思想で、その背景には旧約聖書が強く影響していることが知られています。
2005年にはカンザス州の教育委員会が”信仰の平等”のために、学校で進化論とならんでID論を同時に教えることを義務付けることを決議し、国内のみならず、海外からも注目を集めています。
3.宇宙の終焉に関する3つの説
かつては、宇宙は始まりも終わりもなく、永遠に存在し続けるものだと考えられていました。
そのような考え方のことを「定常宇宙論」と呼びます。
しかし、「ビッグバン」仮説が生まれ、有力な理論へと強化されていく過程で、「宇宙の終焉」に関しても、より積極的な研究活動が行われるようになってきました。
では、科学者たちはこの宇宙の終焉がどのような形で訪れると考えているのでしょうか?
①再びビックバン以前の状態に戻る「ビッグクランチ」
宇宙はビッグバン以降、膨張を続けていると考えられていますが、これは最初の爆発エネルギーが残っているためです。
しかし、ビッグバンが起こることによって、この宇宙には「重さ」=質量も誕生しました。
この質量が一定以上存在していると仮定した場合、宇宙の膨張は質量によって生じる重力の影響でブレーキがかかり、やがて限界点に達します。
膨張を止めた宇宙は、今度はその質量によって収縮を始め、最終的にはビッグバンが起こる以前の状態へと戻ることになります。
これが、宇宙終焉のモデルのひとつ、「ビッグクランチ(Big Crunch)」です。
また、宇宙がビッグバン以前の状態に戻った後、再びビッグバンを起こし膨張を始めるとする説もあり、これを「ビッグバウンス(Big Bounce)」と呼びます。
我々の住む宇宙は、繰り返されるビッグバウンスが生み出した、無限回数存在した宇宙のひとつに過ぎないのかもしれません。
②膨張する力が質量に勝ち、宇宙がバラバラになる「ビッグリップ」
ビッグクランチが起こるためには、ひとつの絶対条件があります。
それは閉ざされた宇宙に存在する質量が一定上である、という条件です。
ビッグクランチは質量が膨張の力に優るため、やがて膨張から収縮へ転じるとされたわけですが、では逆に、質量た一定以下しか存在せず、膨張が止まらなかった場合、どうなるでしょうか?
この場合、膨張の加速が続いた挙句、最終的には宇宙が「張り裂け」、銀河系から恒星といった天体から、果ては原子に至るまでがバラバラとなって崩壊するという終焉を迎えるとされています。
この「ビッグクランチ」と真逆となる宇宙の終焉は「ビッグリップ(Big Rip)」と呼ばれています。
③無限に広がる絶対零度の世界が残る「ビッグフリーズ」
「ビッグクランチ」と「ビッグリップ」は、共に宇宙が「閉じて」いることを前提に成立した考え方です。
しかしもし、宇宙が「開いている」=永遠に膨張を続けられると考えた場合、どうなるのでしょうか?
宇宙の膨張は止まらず、物質密度はどんどんと希薄になっていきます。
熱エネルギーが奪われていき、ブラックホールすら蒸発し、あらゆる天体は粒子レベルまで崩壊して無限に広がっていきます。
その結果、希薄なスープ状の粒子の広がりだけが残り、その宇宙は絶対零度の極寒の世界に成り果てると言われています。
この第三の宇宙終焉モデルは「ビッグフリーズ(Big Freeze)」もしくは「ビッグチル(Big Chil)」と呼ばれています。
まとめ
科学技術の発達は著しいですが、宇宙の深淵の謎を解き明かすまでには、いまだ至っていません。
少なくとも、宇宙が終焉を迎えるまでには、まだ数十億年以上の時間がかかるとも言われており、とりあえず、現代を生きる私達が「宇宙の終わり」を恐れる必要はなさそうですね。