明治時代や江戸時代、更には起源がいつなのかさえも分からない程昔から伝え続けられてきた童謡が日本には数多く存在している。その中には不可解な内容に思える歌詞も少なくはない。
古くから人々の間で伝えられている間に歌詞が正しく伝わらず、少しずつ変化していってしまったのか、それとも最初から意図的に奇妙な歌詞だったのか。現在において童謡に関しては未だに多くの謎が残っている。
中には小学校の音楽の授業で習う歌もあるが、音程や歌詞について習うだけで由来や起源まで習うことは滅多にない。ましてや歌詞の不可解な部分については触れることもないのだ。
そんな背景もあり、我々はメロディーを知っているし歌うことも出来るが、詳しい内容や歌詞の深い意味を知らないという童謡が沢山ある。
童謡「ちょうちょう」
花と花との間をひらひらと舞う可愛らしい蝶の様子を、子どもに分かりやすく伝えているこの童謡。現在は音楽の授業で使用される教科書や、ピアノのレッスン本にも必ずと言っても良いほど起用されている有名な曲だ。
ちょうちょうの原曲はドイツの「幼いハンス」という古い民謡だとされている。幼いハンス少年が成長し、故郷を離れて7年間もの旅に出て、後に帰郷をするものの誰もハンスだと解ってくれなかったが、母親だけはすぐに自分の息子であることを悟ったという「ちょうちょう」とは全く異なる内容だ。
ちなみに近年まで、この歌の原曲はスペイン民謡であるとされていたが、それは誤りである。
歌詞を付けたのは野村秋足(のむら あきたり)という国学者であると紹介されている文献やサイトもある。
しかし一方で、野村秋足が童謡を調べて回る仕事をしていたとされる説もあり、歌詞の全てを野村秋足が考えたのではなく、元からあった歌詞の一部を修正したのみであるとの見方もある。
しかも、このちょうちょうは一般的には知られていないが二番まで続く。奇妙なのは一番の歌詞を書いた人物とは同一人物ではなく、稲垣千頴という女性が歌詞を付けているという点だ。
ちょうちょうの日本語の歌詞については、浮気症の旦那を持つ妻が皮肉を込めて作った歌詞だという説もある。蝶を旦那、花々を遊郭の女郎たちを示しているのだという。
童謡「とおりゃんせ」
メロディー的にも歌詞的にもやや不吉な感覚を持たれやすい、童謡とおりゃんせ。歌と共に遊び方も存在しているのですが両方が普及しているわけでもなく、歌のみが一人歩きして広まっている。
歌詞の内容は7歳になる子どもの為に天神様の元へお札を納めに参る、という内容だ。「天神様」「お札」「行きはよいよい、帰りは怖い」の歌詞が恐怖心をさらに煽っている。
ちなみに、この歌に出てくるお札とは生まれてから7歳まで、神様(天神様)が子どもを守ってくれるお守りのような意味を含む。
つまり「行きはよいよい、帰りは怖い」とは、行きはお札を持っているので神様がお守りしてくれるため怖くはないが、帰りはお札を持っていないので怖いという意味なのだ。